〜沖縄本島一周ツーリング2006〜

思い起こせば2004年10月、密かに企てた沖縄本島一周の野望は、2週間の滞在期間中に3個の台風が通過するという悲惨な、しかし沖縄ではそんなに珍しくもない天気により、敢えなく崩れ去ったのでありました。
あれから2年、なんの前触れもなく突如沸き起こったリベンジへの思いに自分でも驚きながら機上のヒトとなった10月19日、、。
そんなわけで2006年10月21日〜11月4日、シーカヤックによる沖縄島一周ツーリングの模様をご紹介します。レポート中にあなたの知らない沖縄がひとつでもあれば嬉しく思います。同じくシーカヤックでのツーリングを考えている方の参考になればこれまた何よりです。  それでは始まり、はじまり〜ぃ。
 

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 そりゃ一周できればそれに越したことはないけれど、どうしても一周! とういうよりはシーカヤックを移動の手段にして沖縄島を旅行する、、、というスタンスだったのでキビしい海域をパスしたり、イヤになって途中で止めてもよいようにカヤックはフェザークラフトK1exp.を使用した。 加えて今回はソロなので信頼のおけるK1の選択に迷いはなかった。 その代償としてリジットに比べてやや劣るであろうスピードには最初から多くを望まなかった。 またリーフの内側では船体布をサンゴで傷つけないよういつも以上に気を使った。 結果的に今回は15日で一周できたのだけれど出来れば1ヶ月ほどかけてのんびりとやりたかった(時期的にそれはムリだったのだが)。
 朝早くから漕ぎ出し午後の早い時刻に漕ぎ終わって上陸し、その集落を歩いて回るのが毎日の日課でありたのしみだった。 そんな旅のスタイルのせいか行く先々でいろんな人たちに出会えた。
 スタート地点の瀬長島にゴールしフネを畳んで装備をまとめたとき、これだけのものを持って人力のみで移動できるシーカヤックという道具の可能性を再認識した思いであった。

DATA
ツーリング期間        2006年10月21日〜11月4日(15日間)
使用艇             フェザークラフト K1exp.
使用パドル(メイン)       ワーナー カリスタ(230cmベントシャフト)
漕行日数            13日(瀬長島から時計回り)
停滞日数            2日(7日目と11日目)
一日の平均漕行距離    25、4km/h
最長漕行距離         34、0km(14日目)
最短漕行距離         10、0km(15日目)
一日の平均漕行時間    4時間02分
最長漕行時間         5時間20分(2日目)
最短漕行時間         1時間30分(15日目)
平均速度            6、3km/h
最高速度(13日目)     7、8km/h
最低速度(1日目)      4、6km/h
区間最高速度         8、7km/h(安波〜ギナン崎)
合計漕行時間         52時間30分
合計漕行距離         約330、0km

ビビッて泣いた回数     数知れず


上記の通りとくべつスゴイ数値はありませんね。 一日の漕行距離にしても
時間にしてもシーカヤックにある程度親しんだヒトなら誰でも挑戦できるものだと
思いませんか(充分な準備と正しい判断が必須なのはいうまでもありませんが、、、)?
そう、沖縄島は決して大きな島ではないのです。




  右の地図をクリックして各地点の画像をご覧ください。→

ツーリングメモ
生活パターン 毎日午前中にしっかり漕いで午後は出来るだけ早めに切り上げた。 午後の大半は上陸した集落を歩いたり、共同店をのぞいたりキャンプサイトを探したりして過ごした。これが楽しみであった。
遅くても午後10:00には寝て7:00には起きた。この時期沖縄の夜明けは6:30頃なので暗いうちに起きて準備し、明るくなるのを待ってスタートすることもあった。
食事 自炊は時間的にも労力的にも負担だし、また折角旅するのだからと、朝食以外のほとんどを現地の食堂などで食べた。時にはハズレもあったがおおむね美味しいものにありつけた。
朝は買っておいたパンと缶コーヒー、買えないときはクラッカー&コーヒーで済ませた。
体調 ツアー中、おおむね体調は良かった。規則正しい生活と運動のせいか毎朝快便であった。後半は疲れのせいか持病の腰痛が出たもののこれもなんとかしのいだ。
毎晩しつこいくらいにストレッチを行い、疲れがヒドい時にはお灸も使った。漢那停滞の日に行ったタラソ沖縄がとてもよく、背中の筋肉のコリがすっかりとれた。
食事は結構充実していたと思うがそれでも2週間で腰周りは随分とスッキリした。やはりカヤックはウエストが細くなる?
装備について   カヤック周りの装備ではPFDがかなりヘタレた。腰の部分、カヤックのコーミングと擦れる部分の表皮にほとんど穴が開い
   た。さらにウエストベルトの右側がすべてほつれた。
  フェザークラフトの純正シーソックは高価なわりに耐久性がイマイチ。カヤックのハルと踵に擦られて内側のコーティングの
   広い範囲が剥げてしまった(ただしこれはK2用のシーソックをアレンジして使っているせいかもしれない)。 この部分は
   当て布をするべきだろう。またコーミングを覆う部分もセンターがほつれたので途中で修理した。
服装 服装はいつも夏場に漕ぐのと同じモンベルの化繊ブリーフとナイロン素材のパンツ、シャツはパタゴニアのライトウェイトクルーネック、これに加えて半袖にカットしたスカノラックも用意し雨のときに一度使った。替えのシャツも一枚持ったが、夕方洗えば朝には乾いているので結局使わなかった。帽子はパタゴニアのビミニキャップ、足回りはキッカースのパドリングシューズでフネから降りるとすぐ島ゾーリに履き替えた。
カヤック 長い付き合いのフェザークラフトK1exp.はいつもどおり信頼によく応えてくれた。ただ一点、前後ハッチの防水テープは耐久性に難がある。 ま、自分で目止めすればよいのだが。
パドル ワーナーのカリスタが良いパフォーマンスを発揮した。行程のほとんどでこれを使った。やはりパドル自体の軽さは大きなアドバンテージだと思う。 また強風を想定して予備には同じくワーナーのアークティックウィンドを用意した。
潮の干満 毎日明日の干満をチェックした。出来ないときはキチンと計算した(といっても45分遅くするだけだが)。
スタートはともかく途中のリーフの出入り、昼の休憩、到着地への上陸など(フォールディングカヤックということもあり)特に干潮の時刻には気をつけた。いつも潮のことが頭にあった。
天気 前半西海岸北上中はよく晴れて暑かった。 辺戸岬を廻っての後半、東海岸は毎日雨が降った。とはいえ降りっぱなしではなく曇り時々雨という感じ。それでも時には激しく降り、テントに閉じ込められた。 朝、雨の中、出艇の準備をするのはつらかった。
リーフ リーフの出入りにはとても気をつけた。進んでいく中でリーフへの出入りのタイミングはとても難しかった。 単に浅い、深いだけでなく、それに干満のタイミングが加わり時として岸より何百メートルも手前で水深がなく漕行不能になることがある(2年前はこれをやって2時間潮待ちをした)。今回は取り残されることはなかったがリーフの中の進入路が判らず自分から乗り上げたことが一度あった(ランチタイムに丁度良かったため)。それでも進入路を最初から見つけていればもっと楽に出艇できたことを思えばやはりリーフ内(イノー)の漕行は難しい(やんばる東海岸ではリーフが恋しかったが)。
沖縄は風の島であると身にしみて感じた。
この時期沖縄ではミーニシ(新北風)といって、毎日北から北東10m以上の風が吹く。地形によってはフネが進むギリギリの強さも経験した。
時計回りに漕いだので大まかに言えば西海岸は向い風、東海岸は追い風であったが辺戸岬を廻ってからの3日間はこの追い風によるデカい追い波が反射波と重なり涙、涙のパドリングであった。
辺野古からはようやく追い風のオイシサが味わえた。とにかく毎日風を感じ、風を考え、風を読もうとしていた。
沖縄は風の国である。
行動食 時には昼食の代わりともなる行動食は今回、やや長丁場ということもあり2本立てに。いつものヨーカンに加えて公設市場で買ったドライパイナップルである。 これは甘さに加えて酸味もありまた適度な噛み応えもあったのでとても食べやすかった。ビタミンCによる日焼けダメージの軽減効果もあったかもしれない、沖縄の海にピッタリではないか! 一袋500円也で購入、全部半分に切ってタッパーに詰めデッキバッグに入れておき適時食べた。15日目(最終日)にちょうど食べ終わった。
ビールと泡盛 ビールは毎日飲んだ、、、という表現は正確ではない。 漕ぎ終わった後のビールのために毎日漕いでいた。
一日のパドリングを終えて装備をカンタンにまとめるとすぐビールを買いに行く。 どの漁港も例外なく近くに冷えたビールを売る店があり重宝した。 
今回のベスト3は辺戸岬を廻った後、奥で飲んだジョッキ生。大荒れの東海岸を漕いだ後、安波の共同店で買った缶ビール。それとゴール後漕店の飲み会での乾杯のビール、どれも実に美味かった。
 
夜もとりあえずビールである。テント内でローカルラジオを聴きながら飲むビールはしみじみと旨かった
泡盛はスタート前に那覇で買った2合ビンを持っていった。漁港の漁師たちは地域によりそれぞれ同じ銘柄の泡盛(シマー)を飲んでいて、漕ぎ進むにつれてそれがいっせいに変わっていくのが面白かった。やんばる西海岸(辺戸名)では「まる田」、それが辺戸岬を超えて安田に来ると「まさひろ」、という具合。
私の2合ビンも途中で何度か銘柄が変わった。
サポート 今回は漕店の大城氏にサポートして頂いた。ツアー中だけでなく装備の荷受やツアー後の後片付けなど全面的にバックアップして頂いた。 毎日その日の行程を終えると現在位置を大城さんにメールした。 ご自身ツアー中にもかかわらず、大城さんからはコース上の危険箇所や注意点、励ましのメールを頂いた。 ソロツーリングとはいえ、このようなサポートがあったからこそゴールまで漕げたのだと思う。 大城さんどうもありがとう!

ツーリング日記
1日目
10月21日(土)

4時間50分で
22、0km漕行


 朝6:00に起床。 宿からフネ、装備一式を抱えてタクシーで豊見城市瀬長島へ。ここは那覇空港のすぐ南側の小さな島で陸続きになっていてクルマで行ける。
フネの組み立てはゆっくりと。途中での組み直しは面倒だからね。フレームの接合部分にはすべてボーシールドを使い腐食に備えた。
 準備を終え、8:35瀬長島のビーチをスタート、 NE7〜9mの風、飛行機の発着を眺めながら那覇空港沖を北上し那覇港内へ。 那覇港内は向い風が強く(NNE9〜11m)いきなりの難航である。
 那覇港をようやく後にして、さて、やはりリーフをかわすのが苦手である。那覇港の防波堤を過ぎ空寿崎の手前でリーフにハマる。水深は30cm、なんとかリーフの外に出て座礁?を免れた。 この頃から12m以上の強風となり、重くてパドルが押せない。仕方なく予備のアークティックウィンドに交換、先が思いやられる。時々ウサギも飛ぶ中やっとトロピカルビーチに到着。 パーラーで不味い沖縄そばを食べてしばしの休憩後、気を取り直してスタートしたが、強風のため結局14:50アラハビーチに上陸。 初日はこんなものか、それにしても暑さと強風のせいでかなりバテた。

アラハビーチで早々にビールを飲む。暑さ(この日は30度)はビールの最高のツマミである。 ここはまだまだ夏の雰囲気、いたるところでビーチパーティーなどで皆楽しんでいて、なんだかこっちまで楽しくなってくる。 嘉手納基地がすぐ近くだからか多くのアメリカ人がジョギングなどをしている。おおっ、キレイな女の子もいるじゃないか! 水場やパーラー、無料シャワーもあり上等ーっ! さっきまでバテバテだったのになんだか元気になってきた。 仲良くなった人たちからはビールの差し入れ。夕食はステーキハウスと奢ってしまった、、とここまでは良かったが、夕食後買い物をしてキャンプ地に戻ると警備員が、「ここはキャンプ禁止なので移動して」という。結局午後9:00過ぎに撤収、再設営となる。 出歩く人で遅くまでうるさく、また蒸暑くて(熱帯夜だった)なかなか寝つけなかった。 ま、週末北谷の真ん中でキャンプするオイラが悪いよね。

北谷ハンビータウンのフリーマーケットのパワーに圧倒される。那覇新都心などにはないワクワクする混沌がここにはある。
2日目
10月22日(日)

5時間20分で
31、0km漕行

8:45アラハビーチをスタート。 右からのフォーローの風(何故だ?)で船足が伸びる。2時間30分で残波岬に到達。岬を廻りこむと東の強風と波でかなり揺られる。やはり岬は岬である。昨日に続きパドルを交換して漕ぎ長浜に上陸。リーフ内に船着場があるのに気づかず、当然進入路も判らず岸から100m程沖で座礁させる(後で判って少し恥ずかしかった)。 まあいいランチタイムだ。
「natura」という小さなカフェで若い女性オーナーと話す、とても親切にしてくれる。食事も美味かった。
13:45長浜を出る。 さて、真栄田岬の手前では尋ねた相手が悪かった。釣りをしていたモーターボートの2人組はリーフから出ずに岬を廻れるという。信じて進むが丁度干潮で水深が足りない、結局500mほど戻り、リーフの切れ目から外に出て岬を廻る。 その後ムーンビーチを目標に漕ぐがうっかり通り過ぎてしまい、15:35タイガービーチの先、富着港のスロープにフネを上げる。今日はここまで。
タイガービーチでシャワーを借りた。夜は近くの居酒屋で食事、ジョッキ生が旨い! 昨晩といい少しぜいたくか。 

夜、スキンダイビングで漁をするという人とハナシをする。 数時間後戻ってきたので網の中を見せてもらった。イセエビ、夜光貝その他見たこともない魚などかなりの量だ、「これでも昔より少なくなった」という。 とはいえまだまだ豊かな海なのだなあ。

今夜も熱帯夜で寝苦しい。 明日、LUEまで行ってベッドで涼しく眠りたい。
3日目
10月23日(月)

4時間45分で
28、0km漕行


8:10出発、天気よく凪。スタート後1時間ほどはリーフ内のサンゴに見とれてしまう。浅い海底にカヤックの陰が映り、透明度の高い海水を通して見るとまるで飛んでいるようだ。普段漕いでいる熊野灘との違いを実感する。万座毛を眺めながら万座ビーチホテルの沖までは風もなくとても穏やかで、こんなこともあるんだなとニコニコしながら進む。その後、部瀬名岬に近づくにつれ北東の風がだんだん強くなり船足は伸びない。結局ブセナテラス前まで2時間半以上かかってしまった。波がやや高いものの、風は6〜8m程度なのでここから名護湾をショートカットした。 退屈さを除いては苦労なく本部半島の付け根、部間に到着。国道58号線の橋下のビーチにフネをつけ、インスタント麺で昼食。ついでにLUEに予約を入れる、「クルマでお越しですか?」と聞かれたので「いや、フネで。」といったら驚いていたがあとで実際にチェックインしたら、ナルホドと納得してくれた。 ゆっくりと休んでから出発、今日の宿泊先LUEまではすぐだった。 カヤックでチェックインしたのは私が最初のようだ。
レストランホテルオンザビーチLUEではフネに水をかけてやり、ハル(カヤックの底の部分)のチェック&簡単な修理。 洗濯、シャワーのあと、レストランの窓辺でのんびり夕日を眺めながら生ビールで生き返る。うーん完璧な状況である、自分で自分が羨ましい。
ここはフォールディングカヤックにとって細かすぎる砂を除けば、カヤックツーリングの宿として理想的。目の前は海、、、どころかビーチの上に建っているのである。すごくおしゃれな海の家である、、はいっ、ビールおかわりしようね!

LUEの近くには酒屋が一軒あるだけ、集落を歩く楽しみがないのはまあ仕方なし。明日からはまたキャンプ生活。
4日目
10月24日(火)

4時間45分で
28、0km漕行



LUEを9:05に出発。直後から向い風(北9〜11m)、じりじり進み瀬底大橋をやっとこ通過する。その先瀬底島北側の湾内は北からのウネリが入りそこいら中にあるリーフにあたって大荒れ、ルートがなかなか決まらない。泣きながらもリーフの切れ目を見つけ、縫うように通過した。次に沖縄記念公園を右に見ながら北上し、備瀬崎を巻こうとするも正面からの風波でなかなか進まない。3〜4mだったウネリは備瀬崎沖でさらに大きくなりてっぺんで崩れだしたため、これは限界と巻くのを諦め逃げることにする。一旦近くの港に入るか、LUEまで帰ってもう一泊しようか。 タイミングを見計らってUターンすると今度はものすごい追い波に、カヤックはえらい角度で縦になる。バウは沈みっぱなしで、後ろから崩れた波を被り、恐ろしさにまた泣きながら漕ぐ。 それでも途中、美ら海水族館沖で偶然リーフの切れ目をを見つけ、ここからリーフ内に入ることが出来てほっとする。これで備瀬崎の切れ目を廻りこめる、、、と思ったがもう干潮の時刻が迫っている。小休止も束の間、全力で漕いでリーフを横断。水深40cmで川のように流れる備瀬崎付け根の切れ目を通過。左手100m沖ではリーフエッジに波が当たって砕け、吼えているようだ。
備瀬崎を通過してやれやれとランチのために今泊に入る。偶然入った「はいびすかす」でとても親切にしてもらう
ソーキそば600円也を注文したらゆで卵とジューシー、食後にアイスコーヒー。それと帰りがけ、これどうぞと缶入りうっちん茶まで頂いた、それにしてもこんなで経営は大丈夫なんだろうか?
今泊からさらに東へ進む、途中とても狭いリーフ内をヒヤヒヤしながら漕ぎ抜けて15:40ウッパマビーチに着く。風が強く(13〜15m)、砂が飛んで痛いのでホテルベルバライソ東側の堤防の内側、歩道上でゲリラキャンプ。強風の中、夜はパスタを作って食す。
ホテルベルパライソでは親切にシャワーを使わせて頂いた。ロビーで携帯の充電もでき、新聞で明日の潮の確認、2階の売店では食料の補充と実に素晴しい(?)ホテルである。

今泊の集落はフクギの並木がイイ感じ、有名な備瀬ほど広くはないがさらに静かな雰囲気に、私はこちらの方が好きになってしまった。
5日目
10月25日(水)

4時間45分で
28、0km漕行



一晩中強く吹き続けた北風が今朝はやや東よりの風になり少し弱まっているようだ。 8:45にウッパマビーチをスタートした。しばらくは岸ベタで進みやがて古宇利大橋をくぐって屋我地島の北端に出る。ここからまっすぐに対岸の平南橋を目指して漕ぎ出した。風は思ったほど強くなく1時間15分で平南橋に着き、岸沿いに進路を北東にとる。途端に真向かいの風で進まなくなった。それから1時間もかけて大宜味村大兼久の郵便局前のビーチに着ける。郵便局でお金を引き出してひと安心、残金がほとんどなかったのである。郵便局員に教わった「笑味の店」でランチ。やんばる味噌汁定食で満腹になる。
ゆっくりと休憩した後オクマ赤丸岬を越え辺土名漁港に入る。

テント場を探してウロウロしていたら地元の漁師大嶺さんにつかまりそのまま漁師の飲み会に混ぜていただく。飲んでるうちにもどんどん人が集まり盛り上がる。地元の人たちと一緒に飲み、話すのは本当に楽しくついつい飲みすぎたが、辺戸岬や東海岸の難所の情報が得られたのはとても有難かった。飲み会の後ラーメン屋まで連れて行ってくれ、奢ってくれた名前もわからない人、この場を借りてありがとうございました。感謝、感謝!

、、、テントに帰る途中から記憶なし。
6日目
10月26日(木)

4時間30分で
24、0km漕行


5:30起床、昨夜の酒がまだ残っている。 うんうん唸りながらも出発の準備を始める、気温が上がり風が出るまでに宜名真まで行き、その先、できれば辺戸岬の様子を覗くだけ覗いてみたいのだ(今日、廻るのはムリだろうと大嶺ボスも云っていた)。
6:45スタート、2時間で宜名真を通過、岬もこのコンディションなら文句はないのだが、、、。そのまま茅打ちバンタ直下まで行き進路を北東に向けたが案外風が弱い、NNE〜NE6〜8mくらいか。波もこの前の本部ほどではなく2〜3mくらい、もう少し行ってみよう。
しかし進むにつれ辺戸岬灯台の真下から波は荒れだした。リーフで持ち上がった波と岬からの反射波が合わさってしばしぐちゃぐちゃの中を漕ぐが、風は強くなっていない。波もときどき頭から被る程度。これなら行けると判断しこのまま廻る決心をする。岬の突端が見える辺りから波はますます持ち上がり荒れる、もう少し沖に出れば良いのだろうが風が気になりその気になれない。だが今、ここの波、この風なら乗り切れる。岬を廻りこみ今や波は左から押し寄せる。パドルのひとかきごとに左舷を見て次の波に備える。だんだん慣れてきた。岬を廻りこみ一旦おさまった波はしかし、展望台直下で再び荒れ立った。まるでロデオのようだ。海面の上下が激しいので、パドルが「空振り」しないようにピッチに気をつけながら漕ぎ続ける。 こうして500m程を抜けると風と波は後ろに回り、揺れも規則正しくなって同時にようやく写真を撮る余裕もできた。なんとか廻りきったようだ。安心と疲労でその後奥に入るまでの4kmを放心状態でのろのろと漕ぎ続ける。

この日は民宿海山木に宿泊、部屋続きのテラスで早速ビール。食事も美味しく食後はそのまま宴会に。YUKIさんとも知り合いになる。彼女は竹富島のちろりん村でショップをやっている人。他にも同宿の人たちと打ち解け、愉快な夜となった。
7日目
10月27日(金)
停滞
今回のツーリングで初の停滞。フネのメンテナンスと休養のためであったが北東の風が昨日よりも強く停滞は良いタイミングだったかもしれない。
朝からカヤックの手入れと洗濯を済ませ、午後はヤンバルの里のおじいが貸してくれた軽トラで辺戸岬へ波を見に行く。岬からの海は見た途端、昨日を思い出し身震いする状況。 うーんまあよく漕いだもんだ。
辺戸岬ではもうひとつ、独活山宇宙太氏に会う。日本中の山を独りで踏破しつつもう7年も旅をつづけているという。マウンテンバイクに山盛りの装備からは生活観が濃く漂いすごいカンロク。 なんともすげぇーおヒトである。

8日目
10月28日(土)

3時間25分で
24、0km漕行


朝、みかんを戴いたヤンバルの里のおじい、おばあに見送られて出発。奥川をゆっくり下って海に出る。今日も北東の風強く、防波堤を回りこんですぐ3mのウネリの中に突っ込むように漕ぎ出した。さあ、後半戦のスタートだ。
小さな岬ごとに律儀に荒れる東海岸を南下、左舷後方からの絶え間ない追い波で息がつけない。安田ヶ島のリーフに入り込むまでの2時間は今の自分の技術、体力、気力のすべてを使いきった感がある。
安田共同店で買ったコーヒーとメロンパンを昼食にして休憩後、再び漕ぎ出す。安波に着いたのはまだ13:00だったが今日はもう限界である。精神的にも疲れてマイナス思考。今から明日の海況を考えブルーになる。それにしても、今日はやんばるの景色を楽しむゆとりもない大荒れの行程であった。 少しフラフラする足元に注意しながら港で水を浴びて着替え、安波共同店でビールを買い、店先の東屋に座りゆるゆると時間をかけて飲む。 それでもやっぱりとにかくビールは旨い!

前線の影響か激しい雨と風の中、米を炊きレトルトカレーの夕食。 そのあと今日が誕生日の妻に電話。名古屋のレストランで仲間と盛り上がる妻との間に、身勝手にも距離感を感じ、これまた身勝手にヘタレる。 夜、強風でハンモックが揺れてなかなか寝付けず惨めな一夜を過ごす。
9日目
10月29日(日)

3時間15分で
25、0km漕行


朝から曇天、今日も風強し。6:00に起きて出発準備。
7:15安波を出るとすぐ3〜4mの波、風も強く一瞬戻ろうかとも思うがとにかくコースに入ってから判断することにして西南西にフネを向ける。かなりキビしいがこれで帰っていてはこの先も進めない。前に進むことよりも沈しないことに集中して漕ぎ進む。昨日同様絶え間ない追い波は時々頂点でブレイクする。怖いけれどフネの安定のためにも漕ぎ続けるしかない。そんな調子で平良湾入り口まで1時間30分、すごいスピードだったみたい。湾内に入ってホッとしたのか、ムリが祟ったか、腰と足が急に痛くなりスムーズに漕げない。慶佐次まで2時間近くかけて休み休み進んだ。 今日は午後をキャンセル、慶佐次のヒルギ林をのんびりみて過ごす。昼食に食べた「かぐや姫」のソーキそばは上等。ソーキが骨ごと食べられるくらい軟らかかった。夕食は地元野球チームの宴会で賑わう食堂でゴーヤチャンプルー。慶佐次新港でキャンプし、テントの中でのんびりと過ごす。このところ夜は涼しくテント内で快適に過ごせる。 痛む腰に「せんねん灸」を施しながら聞くラジオからのオキナワンサウンドに和みの夜は更けていく。 明日は午前中に大浦湾口を横断したい。

ここ慶佐次にはシットオントップカヤックを使ってヒルギ林を見物させる会社がいくつもある。天仁屋崎辺りの海況について話を聞きたかったが外海はあまり漕がないようでたいしたハナシは聞けずじまい。ツーリングカヤックにもあまり興味はないみたい。
ところで慶佐次共同店のオバちゃんに聞いて新港にキャンプしたものの、トイレがどうしても見つからない。仕方なく早朝、キジ打ちをしてしまった(恥)。

夜、辺土名の漁師、大嶺ボスからTEL有り、少し話す。 力が涌いた。 多謝!
10日目
10月30日(月)

4時間10分で
30、0km漕行

6:00に起きてみると一晩中響いていた波音が気のせいか小さく聞こえる。風も弱くなっているようだ。小雨が降り視界が悪いがこれは出てみる価値がありそうだ。
小雨の中準備をして7:30スタート、30分で天仁屋崎まで出る。けっこうウネリがあるものの昨日に比べ確実に良いコンディションだろう。「そのまま、そのまま」と海にお願いしながらハナレの岩山との間を通り、聳え立つバン崎へ。風に乗りあっという間にバン崎を通過。このあたりから単純な追い波となるが雨が強くなり、霧も出て視界が利かない。念のため左腕にストロボライトを装着した。視界は約50m。デッキのコンパスと、左後方からの波がフネに当たる角度、右側から聞こえるリーフブレークの音を頼りに安部オール島を目指すが相変わらず視界が悪くコースが判断できない。仕方なく島の手前で大城さんに電話して確認。アドバイスに従い安部オール島の沖側を廻り大浦湾に入る。
途端に波は低く規則正しくなる。やっとヤマ場を越えたようだ。同時に “やんばる” を後にした実感がした。そのまま湾を横切り久しぶりにリーフ内を漕ぎ進んで辺野古に入る。今日はここまでのつもりで町を歩いてみるがどうも気に入らない、なんだか落ち着かなく、肌に合わない感じである。しかたなくランチの後再スタート。追い風でラクラク10km先の漢那ビーチまで漕ぐ。
今日はここで民宿泊にした。漢那ドライブイン2階の漢那荘である。階下のドライブインで朝夕を食べて一泊5,000円也、居心地良くとてもリラックスできる。おすすめのお宿である。

夜、大嶺ボスに連絡つかず。
11日目
10月31日(火)
停滞
出れないことはなかったし、実際朝まではそのつもりであったが、起きてみてどうも気が乗らない、、、これは停滞だ!
朝食後はマンガタイム。 洗濯をして10:00過ぎにバスで金武町へ。社交街を歩き、高台から伊計島他を望み、町役場でHPに書込み。ランチはキングタコスででかいハンバーガーを食べる。1個で満腹、しかも安いぞ!
午後からはタラソ沖縄でちょっとしたリゾート気分を味わう。体をすっかりほぐして帰り、夕食までまたマンガタイム&昼寝。
、、、安穏としてまれにみる良い一日。

さあ、明日からは島渡りの始まりである。
12日目
11月 1日(水)

2時間50分で
20、0km漕行


朝食後、漢那荘のネエネエから弁当の差し入れ。ありがたく頂いた。それにしても貰いものの多い旅である。
8:50スタート。少し強めの東風の中ウネリはそれほどでもなく、漢那〜金武岬から宮城島へ渡り着いたのはまだ11:00前だった。ビーチで小便をして釣り人と少し話をした後、平安座島との間の水路を抜けて島の南側に出、そのまま浜比嘉島へ渡る。昼前に港に入りここで外間さんと待ち合わせ、外間さんの案内でにーぶい村前のビーチへ。 にーぶい村はまさに大人の隠れ家的場所で今年はここでフェザークラフトミーティングを開催したそうだ。ビーチに座ってのんびりと差し入れの弁当を戴き、シャワーを浴びたあと外間さん宅に遊びに行く。夜は借りた自転車で夕食を食べに行った。帰ってからそのまま外間邸で飲み会。
夜10:00、雨が降る中、自転車でにーぶい村まで帰り、設営済のハンモックにもぐりこんですぐに寝てしまう。

お世話になった外間夫妻のお宅はタープを張った庭がありとても落ち着く。初めてとは思えないほど寛いでしまった。 もちろん酒も旨いのである。 外間さんの、「おやすみ」はその後に、「ハブに気をつけてね!」もくっついてくる。 ちょっとドキドキ。

しかしこの天気、何とかならないものか! しばらく青空を見ていない。
13日目
11月 2日(木)

3時間20分で
26、0km漕行

出発の準備が整った頃外間さんが様子を見に来てくれた。改めてお礼をいって9:35スタート。途中浮原島へ寄ったが曇天、強風でちっとも気持ちよくない。トイレ休憩のみですぐ出発。南浮原島を左に見ながら津堅島に11:20到着、空に所々見えるのは、久しぶりの青空だ。港近くのなんだか投げやりな味がするそば屋で昼食を済ませて12:20出発。久高島までは北と北東、2方向からの追い波でとても漕ぎづらく、波に終始文句を言いつつも13:55、久高島到着。 小やどSAWAでシャワーを浴びてから島内を歩く。なんだかネコの多い島である。それに近づいても逃げようとしない。ヒトもネコものんびりとしている。 夕方、島に吹く風は湿り気を含んであたたかく、妙になやましかった。私の好きな、沖縄の離島にだけ吹く風。

津堅島での話。 港のスロープに着けてフネから降りて、、、すぐにすべった。 何故か両手でパドルを持っていたのでどうしようもなかった。なんとか頭だけ縮こめてそのまま尻から落下。直後、肛門から脳天に激痛がはしり声も出ない。一度は立ち上がり周りを気にしてみたものの、、ダメだ!そのままもう一度倒れこみ数分間悶絶した。『これは病院へ行かないと、でもここは離島、、、』とまで考えた。少しだけれど涙も出た、ホント痛かった。
こんなコケ方をするとは自分もいよいよトシであるなあ。
14日目
11月 3日(金)

5時間05分で
34、0km漕行


波の感じは昨日と大差ないものの風は少し弱く感じる。8:35宿のSAWAさんと娘さん、同宿の鈴木さんに見送られ少し照れながらスタート。港を出てすぐウネリの中に入る。コマカ島までは思った以上に大きなウネリに手こずった。 楽しみにしていたコマカ島に上陸したものの、風が強く(10〜13m)、『南国の無人島』的気持ちよさは皆無。仕方なく小休止後早々にひきあげた。
さて、ここから先はリーフ内を行くのでニコニコしながらのんびり進む。風に押されてあっという間に百名ビーチに到着、その先の新原ビーチまでは岸ベタを進み、浜辺の茶屋でピザを食べるつもりだったが、干潮のため近づけない。リーフを歩いていくのも面倒なので、宮本亜門邸と一緒に写真撮影をしてよしとし、先に進む。少し空腹を感じながらも奥武島手前からリーフの外に出て大渡海岸を目指す。大渡海岸で昼休みもよし、ホーボーの宿ヤポネシアで一泊もよしと考えながら進むが結局ここでも上陸は出来ず、仕方なく喜屋武岬を廻ることにする。荒崎の手前で我慢できずフネのなかで小便。この折りたたみバケツは洗濯、洗面器、上陸時のバッグ、そしてとうとうシビンとしても使ってしまった。風にも乗って一気に荒崎へ、やはり風裏のせいか思った以上に穏やかである。喜屋武岬直下ではまったくの凪であった(ただし岸から150mまで)。
なんと云う事もなく喜屋武岬を通過、辺戸岬とは大違いである。 リーフを大きく廻りこみ向い風になったのを感じながら喜屋武港手前でリーフ内に入り、スロープにフネを上げた。ようやく昼ごはん、喜屋武の「三姉妹」でかつ丼を食べた。ここは2年前にも来ている。確かに3姉妹で切り盛りしているのだが、、、、気になる方は一度どうぞ! ちなみに「沖縄本島最南端の食堂」とのことです。
再スタート後はやはり2年前、4日間の停滞キャンプをした懐かしの名城ビーチにちょっと寄ってから糸満港へ。向い風とはいえそれ程強くなく、1時間ほどで着くことができた。これでほぼ一周達成である(2年前と併せれば)。
明日はウィニングランだね、でも最後まで緊張を保たねば、、、。
15日目
11月 4日(土)

1時間30分で
10、0km漕行

昨日糸満港に着いた時点で自分の中ではこの旅は終わってしまっていた。残りも10kmで、ずっとリーフ内である。強風なのはいつものことだが向い風すら楽しみながら漕いだ。今回のツーリングを思い出しながらじっくりと漕ぎ進み10:25、この旅のスタート地点の瀬長島のビーチに到着。
とくべつな感情もなく明日もまた漕ぐかのようにいつもどおりにフネを着ける。 フネから降りてひと休み。ぼんやりと海を眺め、『あっちの方へ行ったのにこっちから来るとは、、、なるほど一周とはこうしたものか、、、』などと、ゆるんだ頭で当たり前のことを考える。
バイクで来て、いちゃついていたカップルを捕まえ写真を撮ってもらった。 
フネをたたみ、装備をまとめ、タクシーを呼ぶ、、、、旅の終わり。
振り返ると私がいてもいなくても関係なく、当たり前に海はそこにあった。

その夜、大城さんの誘いで漕店ツアーの打ち上げに乱入。 レインボー、Gアウトフィッターの皆さんからも祝福され感激であった。 その後も宴会は続き、宿に帰ったのは午前3:00を過ぎていた。 翌日はダウン。
Special Thanks 漕店の大城さん&酒井さん、沖縄カヤックセンターの仲村さん、浜比嘉島の外間さんご夫妻、辺土名の漁師大嶺ボス、長浜のカフェnatruraさん、今泊の「はいびすかす」、ホテルベルパライソ、タイガービーチ、オンザビーチLUE、国頭村奥のヤンバルの里のおじい&おばあと民宿海山木さん、漢那ドライブインのネエネエ、久高島の民宿SAWAさんと同宿の鈴木さん、シーカヤックショップレインボーとGアウトフィッターの皆さん秋吉さん、松ちゃん、小林さん、岩見澤さん、アラハビーチで結婚披露宴の出しものを練習していた3人組、そしてこの旅を応援してくれたみんなのおかげで今回の旅を楽しく無事に終えることが出来ました。どうもありがとう!
                           
 (おしまい)
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