カヤックによる紀伊水道横断とあれやこれや
2001年に三重県賢島をスタートして以来、10年以上かけてのろのろ続けてきたこの旅も、あとは紀伊水道の横断を残すのみとなった。昨年は和歌山県日の岬まで漕ぎ進み、今年ようやくのフィナーレである。いよいよこの旅の最終目的「ちょっと四国へ、讃岐うどんを食べに」、を果たす時がきた。
淡路島の南端に沿って漕ぐのはあまり魅力を感じないので、コースは紀伊水道の一番狭いところ、和歌山県日の岬〜徳島県蒲生田岬間とした。
2013年4月29日8:20、黄砂のためか目指す四国の島影すら見えない中、サポートの古田嬢、倉戸嬢の二人に見送られて産湯を出発。この旅では最初にして最後の女子の見送りに、やや照れながらのスタートである。前日、コンディションが悪く途中で引き返し今日は予備日。つまり今回の日程中最後のチャンスであるが、昨日とは打って変わり風は南からの微風、波もないに等しい上々のコンディション。ニコニコの旅立ちである。ただ前日の風波の記憶がまだ強く残り、いつにない緊張感ではある。
今回はスタート地点が紀伊半島、ゴール地点は四国と地続きではないため、クルマの回送が必要となる。そこでこの旅に共感してくれた古田嬢とその二人の友人、総勢4人の旅となった。旅を終えて振り返ってみると、そのサポートは物心両面において大変重要であり、これまでのような
単独行では非常にハードな旅になっていただろう。三人娘には心からお礼を申し上げたい。そんなわけで、今回はカヤックだけでなく旅そのものも楽しみたいと考え、計画的ではないものの、興味を引いた物事には取り敢えず首を突っ込み、気になる物は道を戻ってでもよく眺め、それこそ酒の試飲などは厭わずに行った。とにかくUターンの多い旅だった。そんな旅のスタイルのおかげか、美味しいものをたくさん戴き、旨い酒も飲むことができて楽しい旅となった。とくに和歌山県湯浅町で味わった生シラス丼の新鮮さときたら、、、さてさて、カヤックに戻ろう。
トラブルのため昨年のゴール地点田杭港からは出艇できず、産湯のスロープからのスタートとなったが、30分ほどで田杭港沖に到達。気を取り直してまずは伊島を目指す。とはいえ四国の5キロほど東(手前)に浮かぶはずの伊島もやはり、黄砂の影響かまったく確認できず、仕方なくコンパスだけを頼りに漕ぎ続ける。中身のオイルが減ってしまったため傾いたままの古いデッキコンパスは正確に方位を指しているのかやや疑わしいものの、1時間ほど漕ぐとうっすらとそれらしい島影。地図で確認しても間違いなく伊島だろう。これで迷子になることはなくなったとほっとする。南風2〜4m。波低し。コンディションは依然上々。ペースもイイ感じだ。30分おきに補給しながら順調に漕ぎ進む。今回デッキバッグには飲料水のほか、いつものヨーカン、バナナ&ドライパイナップル。さらに、エナジーパックに加えてミックスナッツを用意した。エナジーパックは3人娘からの差し入れで、体力的に一番キツい伊島の手前で摂取した。
日の岬から2時間ほどで航路(紀伊水道)に近づく。側面にドイツ語でなにやら書かれた大型船をやり過ごすため5分ほど停泊。それにしてもこの船以外は360度の水平線。普段なら遠くに島影くらいは望める距離のはずが、こんな体験ができるのはむしろ黄砂のおかげというべきか。とにかく
一番近いビールまで最低でも20kmほどは漕がなくちゃ、、、うーん、たいへんだぁ〜!
航路を越えてからはひたすら伊島を見ながら漕ぎ続ける。やや強くなる南風の中、それこそ穴が開くほど島のシルエットを見続けながら漕ぎ進み正午、伊島沖に到達。このあたりから南風がさらに強くなってきた。30分かけて島を北側から半周し12:30、港に入って休憩。サポート隊と連絡をとってみるといろいろあってまだキャンプ地周辺だという。ならそれほど慌てることもないか。何もないであろう蒲生田岬でボーッとピックアップを待つよりも、ここ伊島でのんびり休憩しよう。そう思い港周辺を歩いてみるが、大きい島ではないのですぐに飽きてしまい、ちょっと昼寝。そのあと船大工のおっちゃんと話し、いくらかは海の情報を仕入れる。
ところがそうこうしている間にいよいよ風が強くなってきた。ちょっと焦りながら急遽14:00に伊島をスタート。港の出口で船外機の漁師からかなりの強風であると告げられる。これが北風であれば、沖出しの風となるので中止も考えるべきであろうが、南風ということを考慮してこのまま蒲生田岬を目指すことにする。ただしいきなり南南西10〜12mの強風。コース上では10時方向からの風となる。強風ではあるが波高はそれほどでもなく、これはせめてもの幸運。それでも息をする強風は時々18mほどまで強まり、キャンプ道具を積んでない軽いフネは風に煽られて浮きそうになる。体を前に倒して耐えながらそのままの格好でパドリング。シブい絵が撮れるとは思うがさすがにカメラを取り出す余裕はない。残りあと2キロ。風はますます強くなり、このまま徳島方面に流されつつ漕ごうかと一瞬考えるものの、いやいやそれは最後の手段。このあとも風の強さが増すとすればできる限り早く上陸すべきで、それには目の前の蒲生田岬のビーチに上陸するのが最良だろう。羊羹を口に放り込み、力を振り絞る。20分後、ジリジリと進みながらやっとこさビーチ手前の離岸堤を回り込み15:10、フネをつける。「着いた」という嬉しさよりも「助かった」という安堵に包まれた。
ようやく四国に到着、初上陸である。フネを下りて砂に足を取られながらよろよろとビーチを歩き、堤防の上から今来た海を眺めると、強風による黒い縞が幾筋も海面を奔っているのが見えた。やれやれ、よく漕いだものだ。
ひとやすみしたら、ゆっくりと時間をかけてカヤックを畳み、道具を片付けてサポート隊のピックアップを待つとしよう。まあ、夜までには来てくれるだろうからのんびりやろう。本だってあるし、ミックスナッツも残っている。
それにしても景色は良いけど強風以外はなんにもない所だよ、蒲生田岬(苦笑)。
使用艇:フェザークラフトK1Exp.
使用パドル:ワーナーカリスタ(230cm)ベントシャフト
コース:和歌山県日の岬〜徳島県蒲生田岬 伊島経由
実漕行時間:5時間20分
Special Thanks:
今回の旅に共感し同行してくれた古田嬢、倉戸嬢、小栗嬢。3人がいなければこの旅の成功はありませんでした。改めて感謝の意を表します。とりわけ蒲生田岬までの狭くて危険な道を慣れないクルマで走破してくれた古田嬢にはその強力な晴れ女ぶりとあわせて最大級の謝意を表します。
昨年同様に旨い料理を戴いた白浜のBar九十九さん。石窯焼きピザだけでなく、シメの焼きカレーも絶品でした。
くたびれたオヤジの体を最高のコンディションに整えてくださったたき川整体健友館の滝川氏、ノリだけで動くオイラに対し、事故のないよういつも注意してくれた久保達也氏、並びにこの旅の途中で出会い、お世話になり、励ましてくれたすべての皆さんのおかげで楽しく無事に旅を終えることができました。
みんなどうもありがとう!(おしまい)
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